暗転
ルラ

静かな 受死日
赤い 耳鳴り
汚れた 嘴を
愛でたい 衝動

時間の 堰を
鬱と 感付き
黒い 水飴を
一入 味わう

奇妙な 甘味に
体が 弛緩し
疲労と 快楽の
絶頂を 繰り返す

それから 意識が
反芻の 思慮外へと
没して 徐に
立ち上る 無意識

固い 霧に
投影 された
記憶の 卍を
消さねば ならない

春の 深海で
尽くした 愚を
痩せた 手首に
また 落とす

傷の 列を
数え 嗤う
俺の 暗黒も
まだ 若いと

幸福が 含む
膨大な 熱量を
零に 処理する
厭世の 目

はや 激情が
爪を 押し上げ
鮮麗な 蓮と
咲く術も ない

俺は 枯れた
人の 碧潭に
捲れる 頁は
もう ない

濡れた 指で
夕景を 描く
こんな 空を
ずっと 待っていた


自由詩 暗転 Copyright ルラ 2019-05-14 19:58:20
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