くだる
るるりら

【さかくだり】
     
あの懐かしい橋を渡れば
蛙のひしめく道がある
いきものを ころさないように
体が傾むく川下にむかって
足をゆっくりと あるく 

あの懐かしい橋を見下ろせば
大雨の日に流れていた大木が見える
身を乗り出して声を立てて笑いながら
激しい濁流を眺めてみると大人は怒る

あの懐かしい橋のむこうで
こどもたちは 喧嘩して仲直りもせず
こどものままで いまも 住んでいる
きょうもあの子は言う
「おまえんちの家の前の空き地は
むかし なまくびがならべとったんど
じゃけえ おまえんち のろわれとるんじゃ けけけ」

妖怪のような いたずらを
風のように じようずに うけ流すこともしないで
こどもたちは いまも あの橋のむこうに
手を取り合うこともなく 住んでいる


【さらに くだり】

花のようでありたくて
親指と親指とをあわせて 小指と小指とをあわせて
あわせた手のひらをひらいて花をかたちづくる
無骨な十本の指を 天にむけて ひらけば
指が エナジーを放つ
縄文土器のように 焔立つ


平成
という時代は 
ほかのどの時代とも違って
時系列に古い順番に並べるのが 今の私には まだ難しい
たとえば
平成土器は このような土器ですよと見せることはできない

だが、小渕さんが たからかと掲げた あの
平成

ボードを 逆さにしてみる。と 
まるで縄文土器のようぢゃあないか

無骨な十本の指を 天にむけて ひらき
平成も知っているこの指が まるで縄文土器のように無骨なエナジーを放つ
平成の文字は まだまだなまなましいエナジーを放っている
わたしは無骨な指で土器のような形をおもいながら
わたしは しずかに花になる

こどもたちは いまも あの橋のむこうだ
手を取り合うことがなくても 花のように 住んでいる


自由詩 くだる Copyright るるりら 2019-05-08 10:08:41
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