或る家で
墨晶
誰かいる様な気がして ふすまを開けた
隣の部屋は誰もいない
更に隣の部屋のふすまを開けた
そして また隣の部屋へ 隣の部屋へ
どの部屋も 同じ様な部屋だ
誰がいると良いのか
誰もいないとわかるまで
開け続けたら良いのか
自らの畳を踏む音 ふすまを開ける音が
部屋から部屋へ移動していく
ふと 足を留める
「 もどるときは 今度は閉めながらもどるのだ
不覚にも もう随分来てしまった
面倒じゃないか ああ 」
振り返ると
開けてきたふすまの奥 元いた部屋が真っ暗だ
「 合わせ鏡を覗き込んでいる様だ 」
遠く なにかが動いた様だった
闇が ひと部屋 ひと部屋
ゆっくりと
こっちへ近づいて来るのがわかった