僕らのワルキューレ
中原 那由多
時雨の後退り
窓が泣くような音がする
時雨の後退り
窓が泣くような音がする
時雨
の
後退り
窓
が
泣く
ような
音
が
する
時雨の後退り窓が泣くような音がする
すーーーーーーーーーーー
すーーーーーーーーーーー
乾いた風がやってくる
化粧水が染み込むよりも
一足早くやってきて
観覧車、回る
観覧車、揺れる
ガラリと
ガラリと
ガラリと
回る
カラリと
カラリと
カラリと
揺れる
音になって
降り注ぐ
音になって
降り注ぐ
あっけらかんとした表情で
固有名詞を連呼した
指先、見えない色をなぞって
浮かび上がった
さようなら
.
.
「再構築」
音がやんで
吹っ切れた
疾風迅雷
大号令
どっどどどっど怒号の合図
ああ悲しいかな
あの子の背中を
追いかけて
追いかけて
授業中の静かな廊下を
駆け抜けて
駆け抜けて
保健室へ飛び込んで
白いカーテンをあけ放ち
シーツに木漏れ日おすそ分け
あ
やっぱりあの子はいなかった
いなかったのだ
最初から
きっと
これが
僕らのワルキューレ
だから
今
この時どこかで
水滴が、落ちる
(ぱ)