幸せな人生
邦秋
溢れ出る感情が、心のキャパシティを超えそうになったとき、
言葉を綴ることで僕は僕をコントロールしている。
そして、その感情は、幸せや楽しさというよりは、
怒りや絶望といった類のものの場合が多い。
だから、安寧な日々の中では作品が湧いてくることが少なく、
詩や詞が生み出されるときと、
心の状態が良くないときとは、ほぼ同義だ。
-「憂い」に「死」を足すと「うれしい」になる
かつて、そんな発明をしたこともあったが、
独立した作品として世に出すには抵抗があった。
言葉を通じて日常の僕への心配を招きたくないからだ。
怒りや絶望を燃料にして筆をとったとして、
それを対象や周囲に直接ぶつけないために
感情を包装紙で綺麗に包み込む。
ラッピングをした言葉で周囲に心配を与えるようでは
丁寧に表現を選ぶ努力が無駄になるからだ。
しばらく、有難いことに作品を生み出す泉が枯れていたのだが、
お蔭様でここ数日は順調に筆が進んでいる。
その中で、作りたてのメロディに載せる言葉を選ぶプロセスを楽しむことで
僕は、僕の怒りの感情を薄めていく。
それだけで穏やかな日常に帰ってこれるから、
僕は幸せな人生を送れていると思う。