空白の森
安部行人
街路図には
方位が記されていないので
正しい道順はもうわからない
人影のないアーケイドを逆順に進めば
三番街と一番街のあいだに
二番街がない
封鎖された地下通路から
川底をくぐって対岸へ渡れば
枯死した塔たちが彼方まで並び
そのあいだに風がある
雨が降る――燃える雨が
消え去りつつあるものたちの上に降る
かつてのぼくらは
見えない二番街へ行ってしまった
塔と塔、そのあいだのいびつな隙間が
いまここにあるぼくらのためのやどりぎ、空白の森。
自由詩
空白の森
Copyright
安部行人
2003-11-20 00:19:31