陽灼け
ぽりせつ

かべの絵葉書はもう永いこと陽に灼かれている

白い空に
白い海をまたぎ
白い太陽が 浮かんでいる
(しずかすぎる痛みは いつも
 もっとも深い傷となってあらわれたーー )

  わたしが生傷と親しかった頃
  世界は体力の届くところまで在ればよかった
  空白の雑記帳が 反逆的な誇りだった
  そのくせ
  箔押しの名入り鉛筆がうれしかった
  まぶしさの中にいて 眩まずにいた頃
  哀しいことなど何も知らず「泣く」ことは
  使いそびれた壮気を 清算 することだった
  明日は明日生きれば事足りた

『疑うことは何もない』
身勝手な自戒を 許してほしい
疑うことが すでに
信じることのはじまりなのだから
疑うことは やめにした

〈たいようまで の は なんだろう?〉

雑記帳の裏表紙が こともなげに問うている
 ーーわたしはそれに 未だ答えられないままでいるーーー

新しい時代が終わろうとしている
爽やかな身体で入る 昼下がりの浴室は
かすかに 不孝者のぬくみがした

(銀座シネパトスでみた 
 海の花火という映画
 名画座と風待港は どこか似ている気がする・・・ )

一枚残った絵葉書の
あの陽に灼けた沈黙が
日没だったのか 夜明けだったのか
わたしにはもう
わからない

深い傷を 探している


自由詩 陽灼け Copyright ぽりせつ 2019-04-13 08:18:55
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