生活のこと
はるな
晴れているから、影も濃い。
くっきりとまるく落ちる提灯の影を踏みながら弾んでいくわたしのむすめ。
引越して転園さきがきまるまで、わたしも仕事を休むことにしたので、さながらこれは春休み。自転車に乗ったこどもたちがわあっと通りすぎていく。犬を連れた人々が集まって話し込んでいる。屋台にのれんがかけられ、鉄板に火が入ると良いにおいがしてくる、ベビーカステラ、たこ焼き、トッポギ、宝石すくい。
染井吉野がきょう、満開です。
あたらしい部屋は陽当たりがわるくてちょっとつまらない。お風呂にテレビがついてたり、扉ががっちりしてるのも、つまらない。つまらないけど現実的で、生活には向いているのかもしれない。ああ、でもやっぱり、ささくれだった畳にさんざん朝日が当たるのが愛しかった部屋や、日の出から夕暮れまでもてあますほど明るかった部屋がなつかしい。
おまけにこの建物はいま工事中で、窓をあけるといちめんに鉄骨の足組なのだ。
どこからもきょうがこないし、どこへもきょうが仕舞われないよ。
そんなわけで、空き箱を仕舞うのもそこそこに花を買いにいく。
生活と、生きていることとを分けて考えれば、どちらかはうまくいく。
夫もむすめも生活の側にいて、それだから愛している。(わたしが望み、戦って手に入れたもの)。
そうしてそれはこれから、わたしが望み、戦いながら手放していくものなのだ。
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