寂しい夜から追い出してくれ
カマキリ
灯台の下のテトラポッドはいつまでも輝いている
防波堤に波がぶつかって砕ける音は
真っ暗な地平線へと吸い込まれていくようだ
パチパチと光る緑色の灯は
きっと私に何も伝えない
落書きと錆にまみれた欄干にぶら下がって見た町は
結局いつもと変わらないものであった
歯ぎしりのような音を立てて
ちいさな漁船が風にうごめく
横断歩道を渡る蟹が
細長い影を作って私に覆いかぶさっていく
猫に雑魚を渡してはしゃぐ子どもたちの声がする
汽笛よ霧笛よ
潮の中でぬるく腐っていく私を
どうか
寂しい夜から追い出してくれ