新宿駅から歩く
番田
手に取るようにしてわかった 店員のひどい作り笑い
一人で海賊版を探して歩いていたあの頃
ストラトキャスターの音色に狂っていた 僕が
好きだったフレーズを試奏した店
毛皮のコートを脱がせて 思いを語らせた暗がり
友達と 居酒屋で そんな女のことを口にして飲んだ
通りすがりの女のために高すぎる服を買い
鏡に映しださせた 真っ白な乳房を見つめながら
数少ない言葉と ああ そして
いくつもの そこで行われた面接によって
座ろうとしていたイスは消えていたことを
絵筆を買いに来た店で思う
駅前の人混みは 昔来た
学生だった僕と変わらない思いがする
新宿駅は かつて 僕が訪れた
学校へ行く途中の乗り換えの駅でもあった