3月の終わりに
秋葉竹


公園のベンチで寝ている女を

小学校三年生の女の子は汚いと言う

ずっとそう教えられて来たから

口をとんがらせて泣きそうになって

汚い汚いとかん高い気分が滅入る大声で叫ぶ

春の陽気でも風はまだ冷たく

白い花が青い空に散りばめられている

女はただ雲になりたい

うつむいてそれを聞いていた

三年生の女の子は泣きながら帰って行った

黄色い電車が公園のすぐ横を通る

小さな噴水には小さな虹が架かる

胸をえぐり取られた女は

リードを伸ばし切った雑種に吠えたてられる

心配で迎えに来た彼に

乾いた音を響かせ平手打ちをあびせる

吹いている風は止まった

風を止める能力が反転し

止まった風が再び吹き始めたとき

止まった時間が動き出す

だから嫌なんだと彼は笑った

だから嫌なのよと

公園のベンチで彼女は笑った





自由詩 3月の終わりに Copyright 秋葉竹 2019-03-23 11:05:51
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