ミスターKの悲劇は岩より重い
TAT
絵とか小説とか漫画とかお笑いとか
およそ表現と名の付くものは全て好きで
あれも良くてこれも良くて
次から次へと呑み込んで
どんどんどんどんセンスを磨いて
じわじわと沸点が下がってって
いわゆるベテラン
玄人
耳の肥えたリスナー
気付いた頃には批評する側に回っていて
良いものを嗅ぎ分けて
美しい作品
面白いマンガ
笑えるネタに
古今東西精通して
当然の帰結として
今度は自分で手真似事を始めるようになった
それはやがてささやかな数のファンを獲得し
孤高であるとか
前衛的であるとか
大衆的な受けよりは質を重んじる紳士淑女に受け入れられて
そうして気付けば無駄に観る目が肥えまくって
今はもうあの頃のように気軽に何かを観て楽しむことが出来なくなっている自分がいる
俺はただ面白いマンガが読みたい
美しい絵を観たい
笑えるネタが観たい
素晴らしい詩を読みたいだけなのに
今はもうそれはどこにも無い
その先にはもう後戻りのできない何もない荒野が
地獄が広がっていて
あとはもう自分で詩を書くしかない