壁画
ただのみきや
夏をひとつぶ紙袋
開いた黒目も傷つけず
眠りの汀を照らすように
灰にならない書置きの
名前も知らない泥の中
前世と呼び馴らせば遠くて近い
五色の風の靡く音に
言葉転げて追っては失くし
上るように下るように
鉄鍋で炒られ
放蕩者は旅を止め
巡礼者は骨も露わ先へと急ぎ
歌びとは花となって散る
古色を帯びてひび割れて
黄砂を纏った未来図へ
脳天から落ちれば
触れても触れてもすり抜ける
不動で強固な幻が
客体としてのわたしを見る
《壁画:2019年3月17日》
自由詩
壁画
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ただのみきや
2019-03-17 14:51:01
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