どこへゆくのでしょうか
帆場蔵人
その手は冷え切っているから
あなたが春なのか冬なのか
わからなくなってしまいます
つくしにふきのとは
いつもの場所にいません
あなたの背中をさがして
遠まわりして歩いていたら
風花が散り、春と冬が
木に吊されて代り番こ
どうにもお加減が優れないようですよ、と
白梅の老木と垣根の椿が囁きあって世間話し
畑に取り残されたいっぽんの大根は
あれが雪なのですね、あれが冬ですね、と
はしゃぐうちにあの老婆に引き抜かれ
夕にはだれかの腹のなかでしょう
とおくで誰かが春を歌っていて
あなたは無情に日をめくり
三月はゴミ箱で眠っています