家族会議はしないけれど
こたきひろし
家族が崩壊しかねない危機的な状況におちいっても
あらためて会議なんてしなかった
そんな日がそんな時が
来たんだよな
前触れもなく突然に
上の娘が下の娘も連れて家を出て
アパートで暮らしたいと言い出した
以前からよくよく考えていたらしい
父親の俺は人間の程度が低いから
それは無慈悲に親をすてる仕打ちにしか
思えなかった
憤慨した
そして
悲嘆にくれて涙が溢れでた
母親の彼女はいたって冷静に受け止めた
何でやねん
何でやねん
苦労に苦労を重ねて
成長させた我が子だろう
何で
自分だけ
深くてあたたかい愛情で受け止めるんだよ
俺は納得しない
親のエゴイズム剥き出しにてもかまわない
つもりが
「分かった」
と
一言を言ってしまった
言ってしまった
何でだろう
自分で自分がよく理解出来なかった
理解出来なかった