光る鴉
ツノル


暗雲とした月のない暗い夜だった。
わたしは人影もない橋の歩道を行ったり来たりしていた。
もうこれ以上先へは進めない。
光る眼をじっと見据えた、黒い鳥が待ち伏せているからだ。
冷たい欄干の上から、何故飛び立とうとしないのか、理由は明らかだった。
(早く此方へやって来い)
と、黒点の奥で誘う妖刀の煌めき。
震える動悸が響きを押し消すのは、この橋の手すりを伝えばわかる。
「ああ、ここから先は崖なのだ、」と、

、それにしてもあの闇よりも暗い鳥が憎かった。殺して喰ってやりたかったが、
たちまち弱い生き物だとわたしは悟ることになる。わたしには鴉は殺せない。
あれは闇に紛れる聖なる俗物。彼らには邪魔をする義務がある。
それは神から授けられた掟。
すべての生き物を、世界から抹消する権利があるからだ。





自由詩 光る鴉 Copyright ツノル 2019-03-12 02:30:41
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