再会
服部 剛
若くして人生を終えた
友が住んだ街を
久々に歩いた
駅前にある
薄明かりのパスタ屋で
白ワインのグラスを傾ける
向かいの空席に
あの日から齢をとらない
透けた面影を浮かべれば
僕のことを詩人だと
無音の声で、君は云う
「こんな僕も嫁さんみつけて、結婚したよ
ひとり息子は障がいもあるけど
なついてくれて、可愛いよ
そんな思いを最近、詩集にしたよ」
「相変わらず不器用な日々だけど
白紙の上に無心のペンを走らせ
夜の酒場の小さな舞台に立ち
今も
詩
(
うた
)
い続けているよ」
――君が旅立って十年
少しは大人になったのか
街の汚れを
纏
(
まと
)
ったのか
わからない
けれど こうして懐かしく飲みながら
無音の声で語らうと
長い間忘れたものが
ふいに込み上げ、目に滲む
あの日 風になった君と
交わした約束を思い出した、僕は
ふたたびまっすぐに
明日の方角へ、目を向ける
自由詩
再会
Copyright
服部 剛
2019-03-05 22:48:14
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