女神が春雷
秋葉竹


月あかりの降り注ぐ庭
馴染まない舞踏の催しはいつまでも続くのだろうと
諦めていたのに
私は彼女の踊りに
心を撃ち抜かれてしまった

生まれて初めて私の瞳に私の光が映った
瞬間だった甘くて美味しそうな唇が私の脳を灼いた

即物的で攻撃的な漆黒のドレスを身を纏い
焔と燃える瞳をナイフにして
私の感情にケロイドを残す熱さで突き刺した

一度夜空を雲が覆い
彼女の姿を見失ってしまったあと
純白の月が雲間から光をあたかも
スポットライトのように当てる漆黒の髪
漆黒のドレス
漆黒の翼
そして真紅の唇。

私は氷像となってもよい
ほんの微かに触れるだけでもよい
女神にキスをしてみたい
と、この世の最後に願う夢を見てしまった


そして私は罰と死を覚悟して
女神に愛を告白してしまい
まるで違う生き物を見るような目で
見られたのだが
でも
私の背中にもまだ小さいのだが
翼が
それも純白の月光色の翼があることを知ると
もう一度私の
彼女から離せない目を怒ったように見つめ直し
そういうことなのね、と自分に言い聞かせるように
口の中で呟き
私にぶら下がるように強く抱きつき
夢よりも甘くて美味しい、そして切ないくちづけを
そっと、一瞬
与えてくれたのだった

その夜から
私は女神に仕える小鬼になったのだ






自由詩 女神が春雷 Copyright 秋葉竹 2019-02-24 21:39:16
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