厭世
ルラ

瞑想する 内面の
冬枯れした 感覚
糸はみな 途切れ
気力の輻射は 尽きた

心底の 廃墟を
刃毀れした 憎しみが
夜風となり 撫で
破風のうえには 妖星が流れた

女の 厭世詩を
青の美と その火として
輝きだった 思想へ
燎原となるよう 与えた

希望など 壊れてしまえ
大理石を 砕け
砕片が 転生する
暗い花の 馥郁たる

燃える 臨界を
逸した 研究
増減する 知識
永続する 自己軽蔑

退屈な 殺気を
横溢させる 没義道
下らない 外の世界とは
絆を 裏切りが繋いでいる

属さずに 到れば
血と詩とを はや境せず
善悪や 禍福の 二面を
病しつつ 希求する

衝動が 記憶の細部を
網膜へと 知悉させ
存命への 裂帛な哲学を
数瞬の内に 完成させる

内奥の 坩堝に
君臨する 生命
心臓という 白い腕
水脈から 赤いろを汲む

人格の 塑像が
捻転し 歪曲する
絶望が 無意識から
意識へと 墜ちる震撼

凍える 霊肉の境界を
経験の 意匠と
夭逝への 未練とで
死に神が 錬成した

過分なく 生き
そつなく 死すという
本能を 欲求が
血管に 放流する

生と死を 反芻し
奇妙な養分を 摂り
異国の歌を 愛で
暗い門を 潜る

朧な 霧の墓標には
孤独な 夜の詩人の名
繰り返し 読んでいる
己にも 死があるのを

己の 罅割れた骨壺を抱き
焼いた詩を 捨てる
壺の口が 紫煙を燻らす
おれはその ため息をみる


自由詩 厭世 Copyright ルラ 2019-02-24 01:43:33
notebook Home