五十音の石
服部 剛
暗い部屋で
胡坐をかいている
私の上に
?
が
ひとつ
浮かんでいる
なぜ人間は
言葉を語り
言葉に悩み
言葉に温もる
のか
たとえば「あ」のひと声も
口から放つ ひとにより
違う音色で…相手の胸に届き
笑いと涙を誘う
だろう
日々を営む 人と人の間で
互いの糸はこんがらがることもしばしばで
あの日
私は呟いた
魔法の言葉はない と
――私は今も探し続けている
巾着袋に、手を入れ
五十音を記す玉石をかき混ぜ
熱をもつ文字のパーツを取り出し
今日出逢う あなたの胸の深い所に
そっと置く