やわらかいおり
渡辺八畳@祝儀敷
あまりの寂しさに
体からスライムを出せるようになった僕は
だれも覗かない自室の中で強張ると
無色透明な粘液に包まれる
まだらに入った気泡になんだかやすらぐ
必然性を含有していないからだろう
生物がいたことのないアクアリウム
地球みたいにぷるぷるゆれている
味も臭いも経験値もないから責めてこない
一切の記憶がこのスライムにはない
ひんやりだけをこころに据えて
欺瞞だとしても浮いていよう
寂しさの代償によって
僕は守られていく
ねとねとしているけれど
くっつきはしない