聖なるもの
やまうちあつし

その店は
聖なるものを売っている
行けばすぐわかる
店の奥から
神々しい光が溢れているから
価格は無料
望むなら誰でも
聖なるものを
受け取ることができる
けれども開店以来
買い手がつかない
客らしき者が入ってきても
タダだと聞くと
尻込みをして店を出る
タダほど高いものはないのか
人は値段のつかないものに
上手く反応することができない
それならばいっそのこと
値段をつけてはどうか
そうすればその価格に応じた
顧客がつくことも考えられる
けれどもそんなこと
許されるはずもなく
店員は今日も店番をしている
涙目で


自由詩 聖なるもの Copyright やまうちあつし 2019-02-18 15:44:19
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