やさしげな審判
ツノル
「パートナー?そうよ、彼のことよ」。
戯けてひらいた手のひら。細い指先が小リスのように動きまわっている。
「ねえ、そこの黒板をもう少しだけ左にずらしてみて、、、」
汗をかきながら揺れる大輪の向日葵。
彼女は笑顔を周囲にふりまきながら、てきぱきと仕事をこなしていた。
インタビュアーはマイクのスイッチを切ると最後にこう付け加えた。
「そうね、オードリー。あなたは離婚してからもう何年も経つんだわ、、」
しかし、その夜には残酷な審判が潜んでいた。
あたまの中で雷鳴が轟いた。彼はしっとり濡れたシーツを大きく羽ばたかせると、突然ベッドの上で膝をついた。そしてむき出しになったオードリーの細い背中にあたまを擦りつけた。オードリーはうつ伏せになり、その余韻に眼を閉じていた。
「ごめん、やっぱり僕は明日ニューヨークへ帰る。どうしても、一度彼女に君との関係を告白しておきたいんだ。」
雷鳴はオードリーの背中を驚かしはしなかった。彼女は少し間をおきながらゆっくりと眼をひらいた。
それから笑みを浮かべると小声で話しかけた。
「そうね、、でも、あなたは本当に正直者だわ。嘘つきで厭なやつほど成功する人間も世の中には多いのに、、、その正直さに、わたしはあなたを赦すことにするわ。」
そう言うと、首を垂れて俯く彼の頬にやさしく唇を近づけた。
※
フィクションである。