水溶性の、誰かの
霜天

おはよう
で、今日も誰かが溶けていく
それでも、空を見上げることを止められなくて
いつの間にか、あちこち穴だらけになっている


使い古しの気持ちを手紙に残して
あなたもすっかりと溶けてしまった
結局今日は降り止まなかったので
あなたが一面で水溜りしていて
飛び越えるようにして歩くしかない
一度踏み込んでしまえば
ずぶりずぶりと
沈んでいくだろうから


身動きのとれない軒下で
雨宿りが定員オーバーで
はみ出した人たちが少しだけ溶けてしまう
そんな世界
夕暮れしているビルの群れで
帰りたくなって、どこかへ
急ぎ足で引き返すと
足元から溶けて、何も残らない

誰も、水溶性の、動き出せずに


向かいのビルの喫茶店では
続々とそれらが溶けていく
押し込まれるように乗り合わせた人たちが
溶けかけた体を払い落としながら
そういえばもう春なんだね、なんて
笑う


自由詩 水溶性の、誰かの Copyright 霜天 2005-03-29 00:39:53縦
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