かなしいおしらせ
そらの珊瑚

大きな欅が伐採された
ものの半日かそこいらで
姿を消した
あっけないほど
たやすく
死んでしまうことは
こんなに簡単

雨を飲み
光を吸収し
息を繰り返し
いくつもの季節をその身に刻みながら
樹は育ち
そのまわりに
ぐるりとしつらえられた
円形のベンチで
枝葉が作った木陰で
夏の人は
ひととき
やすらいだ
精密でランダムな枝と葉の
たわやかな隙間から
光が優しい速度で
落ちてくる

「かなしいおしらせです」
欅の死を
風が知らせてまわる

鳥が来てほんとうだと騒ぎ
誰が殺したと蜂が唸る
猫は切り株を見た
或いは
いなくなったものをじっとみつめた
地面の下の幼虫は
まだ死んじゃいないと泣いた

朝が来て
かなしいおしらせを
おひさまはてらします
いつものように






自由詩 かなしいおしらせ Copyright そらの珊瑚 2019-02-02 10:44:43
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