ファンタジア
ドライ運河

どこか楽しいところに行こうか
平日で季節はずれで
誰もいないような
そんなテーマパークがあればいい
小さな車ですいている道だけたどって
近頃君が好きになった外国の音楽を流して
ほんの少し窓は開けておいて
知っているサビの部分だけ
一緒に口ずさむ

空気の成分は
季節の正体はなんだろうか
春がそこまで来てるよって
花粉の到来に頭をもたげる俺とは違い
君の目線の高さは
すぐ変わっちまうんだろうね

面白い建て物を見つけたら教えて
くだらない広告には笑って
綺麗な人は俺だけが黙って見る
知ってるかい
この街も昔は海の底だったと
暗くなればその面影を感じられる
キラキラしたクラゲの洪水
飲み込まれていくプランクトン

君の寝息に混ざるドーナツみたいな気泡は
真っ直ぐ浮かびあがる天使のリングのよう

魚になったらエンジンは置いていこう
古い巻き貝を集めて
夜明けの先まで泳いでいけたら
どんなに素敵なことだろう

にぎやかでとても静かな日
不安で胸がさわがしくなることもない
ささいな悩みは頭蓋から逃げ出して
はしゃぐ君と走っている
燃えるようなダンスと
きらめく花火に見とれている
現実のただなかにいるなんて
ウソみたいだね
迷い込んだ迷路の果てのジオラマならたぶん
目の前でゆらめくこの世界
きれいだね

木馬がくるくる回って
君は笑いながら手を振り
それに応えようと手を振り返すのに
なぜだろうサヨナラの合図のようで
寂しくなる不思議だよ

ニューシネマパラダイスの
泣きながら笑っている主人公の顔を
うまく真似できたら

波打ち際は遠くまで続いて
くるぶしほどの波がさざめく
心地いい潮風が背中をくすぐる
木馬が水平線をなぞって走る
君の姿がかすんでいく
俺は手を伸ばしている
もう帰らないとね
わかっているよ
幸せそうに手を伸ばしている


自由詩 ファンタジア Copyright ドライ運河 2019-01-28 11:09:31
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