一角獣
やまうちあつし
一角獣が来ないかなあ、と思っている
全部解決するのになあ、と思っている
さっきから突っ立って待っている
一向に来ないので待ちくたびれている
乙女じゃなきゃだめかな、と思っている
確かに年を取ってしまったしな、と思っている
ましてや女でもないしな、と思っている
一角獣は何を食べるのかな、と思っている
やっぱ花とかかな、と思っている
まさか餓死していないよな、と思っている
共食いとかしないよな、と思っている
それにしても来ないな、と思っている
ペガサスじゃないんだよな、と思っている
同じようだけどジャンルが違うんだよな、と思っている
少しファンシーすぎるというか、と思っている
ペガサスに憧れたことは一度もないな、と思っている
野球好きな人からは同じ馬やんと思われるだろうな、と思っている
足が疲れてきたな、と思っている
待ち疲れたので煙草でも吸おうかな、と思っている
と思ったが煙草は吸わないのを思い出している
壊れた天使を抱いている
という詩を書こうとして書けないままだ
気が付くと下腹が痛い
振りむけば一角獣が来ている
角が下腹を貫いている
これを待っていたのかなあ、と思っている