コンパスの精度だけマジで神。
TAT
大人になってから知った事だけれど
京都以外のマクドの看板は随分鮮やかで赤い
産まれてからずっと僕は
えんじ色がマクドナルドのデフォだと思っていた
固まったような血の色だ
阪急も丁度そんな色をしていて
あの町に居た時は気にもしていなかったけれど
他の町にはあんなシックな色の電車は無くて
今ではあの深い赤が幾分懐かしい
僕の頭の中のブランキージェットシティには
市バスの薄いみどり色と
ベージュの京都バスと
えんじ色の阪急電車が今も走ってる
タクシーは無論MKだ
日曜日の朝
阪急の準急に乗って
西京極で降りて
京都市中学校陸上競技大会
百米も四百リレーもあっさり負けて
ペタペタとブルーシートを畳んで帰った
ファミマの角バーガーを買い食いしながら
一旦帰ってからお前の家に行くから
メガドライブをやろうと約束して別れた
あの頃ぼくらは処女と童貞で
世界は手つかずのまま
翼のように
奈落のように
明日という名のインク瓶をうっかり倒してしまったかのように
でたらめに広がっていた
だから今でも何かを決める時は
そっと阪急のベンチで目を閉じて
ぎゃあぎゃあやってくる中学生の馬鹿に
どっちへ行けば良いと思うか教えを乞うている
そいつはカシャカシャいうカッコいいジャージが
ウインドブレイカーという名前なのをまだ知らない程の馬鹿だが
羅針盤の精度だけは凄い