西の空に向かって
こたきひろし

背中にぜんまいがついている。それがすべてのヒトの動力源だから、必然とそれを回す力が必要になる。
果たしていつからそんな仕組みに変化したかは解らなくなっていて、それを追及する行為には死の罰則が待っていた。と言ってもそれはぜんまいを背中から外されてしまうという穏やかな方法が用いられている。
ハンマーで打ち砕かれるとか、重機で踏み潰されとかではけしてない。

いちにち一回巻かれてそれぞれが眠るまでの間のエネルギーは確保される。眠って目が覚めるまでの間にぜんまいは巻かれに巻かれるのだ。どうやって巻かれ出すかは極秘になっている。それは想像する事すら許されていないのが私達の偽らざる現実になっている。

背中にぜんまいがついているのでヒトはうつ伏せに寝るしかない。
ぜんまいは男女公平についているから、繁殖の為の体位は極めて限定されている。あくまで生殖の為にのみ行われているから、愛情とか快楽とかが間に入る余地はなくなっている筈たが、それでもそれを求めるヒトの数は減らない。
発覚されしだいに厳罰に処されるとわかっているのに。
そのエネルギーはぜんまいのそれを時にしのいでしまうので大きな社会問題を引き起こしている。

ヒトのなかには自らぜんまいを壊してしまう不届き者もいて、その結果はスクラップ置き場に山積みされて放置されている。腐敗して白骨になって良いことは何もないのに。後を立たないのだ。

最後に
西の空に向かって
という題名とちっとも繋がりそうにないので、これ以上書く意欲をなくしてしまい
作者は途方に暮れた。

途方に暮れた。



そうとも言えない
何となく黄昏ていて
西の空に沈むお日様を見るような
切なさが込み上げてきているよ。




自由詩 西の空に向かって Copyright こたきひろし 2018-12-23 07:44:19
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