八割九月
竜門勇気


めいめいつながりを
持ち合ってかわす
不完全な非コミュニケーション
爪の先を見比べながら
化学的な波が頭ん中でぐらついて
ずっとずっとずっと朝のまま

皆殺しを叫ぶ
一人ぼっちの砂漠
両耳の奥に力をこめて
完全な非コミュニケーション
じわじわ音がする
見えるし、触れすらする代償
気づかないことだけ集めて
誰の目にもとまる塔は積まれる
ずっとずっと朝のままのラジオ

気持ちいいことばかり集めて
蒐集家は化物になっていくんだ
つま先から始まって
睫毛で終わる儚い旅

八割九月
すべてが終わる前に
八割九月
すべてが始まってしまった

気持ちいいことばかりを食べて
蒐集家は自分に帰っていくんだ
君が食べれるものだけ食べてきたように
ひどくお互いに寂しくなるかもしれないし
そんなことがくだらないと気づくほど
痛々しい気持ちになるかもしれないし

誰も
言わないはずの言葉が
存在しないものばかりが
肉の内側の工場で作られて
その淡さに打ちひしがれて
魂に最後の楔を打つ

すべてが終わる前に
すべては始まってしまう
何もかもが詰め込まれた季節を
十等分にして
少し残して僕は一年かけて食べる



自由詩 八割九月 Copyright 竜門勇気 2018-12-23 05:50:52
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