ト なって9 声へ
ひだかたけし
名指され得ぬモノ
今刻々と
降っている降っている
*
獣の声、
響いていた
死者の声、
響いていた
師走も端に走りいき
年の瀬都会の大渋滞
怒涛の静けさ霊園墓地に
ほのかやわらか木霊した、
死者よ獣よ
宇宙の声よ
意味も響きも未分化の
オマエをわたしはワケもわからず
涙流して抱き締めた
沈黙の底を掬いながら
必死ヒシと抱き締めた
声とはいったいなんだろう?
愛しい人人人の声
喉震わせ剥き出し露わ
裸の現れ耳朶に触れ
もうアッサリと消えていく
(何年何十年寝起き共にし
そのたび抱き締め蹴飛ばした
声声声声声声声声声
声声よ!
白鷺の冷たく澄んだ水面を過るが如く
毅然と優美に響き去る)
声は問いを拒絶スル
するっと逃れて笑っている
スルースルーするするするする鳴(泣)きながら
声は言葉を燃え立たせ
言葉は未だ声を鳴(成)らせず
ナラバ
今は、、、
言葉叩くしかシャアないヨー!
耐えて叩いて
貴女を追う
黄泉の果てで喉震わせ
不思議な身振りで踊り続ける
貴女の後ろ姿を抱き締める
その日夢みて物質の
コトバ、無音の 夜に打つ
(独り響きを確かめながら
貴女の木霊に寄り添い努め
底の底底果ての果て
触れ触れ触れ触れ独り震え
響き木霊のなかでのみ
己の在処を示すモノへ!)
獣の声、
響いている
死者の声、
響いている
師走も端に走りいき
年の瀬都会の大渋滞
怒涛の静けさ霊園墓地に
ほのかやわらか木霊する
死者よ獣よ
宇宙の声よ
意味も響きも未分化の
オマエをわたしは未だ知らず
涙流して抱き締める
沈黙の底を掬いながら
必死ヒシと抱き締める!