みちばた
田中修子
黙りこくって下ばかりみて 歩いていたら
花が咲いていた 枯れ葉が落ちていた 色とにおいと
たまに ぽかあんと 空をみあげると
ひろくって 青くって ちょっと吸い込まれてしまいそうで
呼吸が、真っ暗なトンネルだったのを、ふりかえってみれば、ひかる道になっている
--ようにみえる、あなたのがそうだから、わたしにもきっと
どくろがころんと、いくつもいくつも道に
ころがっていて、その眼窩から溢れるように
色とりどりの花が咲いていて、いつだって想い出がこぼれて消えてしまいそうになるのを摘んで、編んで、からだじゅうに、巻きつけて、枯れてゆくのが、はらはらおちていって
そうっと荷物を置いてしまおう、あら、肩にかみついてたんだ、ごめんね、どくろちゃん
(ああ、自分が置き去りにされた 荷物で どくろで あったこと いまは忘れるふりをして、
さようなら、さようなら)
道がすれちがって十字路になって
そこに錆びれた雨ざらしのベンチがあって
ひとときのお茶をしよう
きみ、すてきな魔法瓶をもっているよ、むつかしい顔ばかりしているから忘れちゃってたんだよ
分け合おう、ほら、いい香りと湯気だよ
腰かけて、おもいでばなしをわずかして
ほんのすこし 体があったまったら
また歩き出そう
--また、歩き出そうね