姉妹
mizunomadoka
帝国と教主国の小競り合いで焼かれた村
地下貯蔵庫の水瓶の中で
姉妹は生き残った
死体漁りに拾われ
奴隷商人に買われ
船で運ばれ
海賊に襲われ
港町の娼館で売られた
銃士の男と恋に落ちた妹を
姉は小火騒ぎで逃がし
これからは妹の分も客をとると言った
屑鉄街で
男はマフィアの用心棒になり
妹は傘下の酒場で働いた
爪に火を灯すような生活の中で
息子が生まれた
男は泣いて喜んだ
抗争が始まり
妻と息子を街から逃がした
幾人も殺し
敵に囲まれ
撃たれた部下の止血をしながら
男は天窓を見上げる
雪が溶け山道が開く頃
妹は荷台を降りて礼を言う
息子さんのことは残念だったと
農夫は涙を拭った
港町は様変わりしていた
娼館は銀器店になっていた
店主に事情を話すと
あんただったのかと
姉に宛てた手紙の束を持ってきた
教主国の手入れで全員縛り首になったんだよ