お見送り
梓ゆい
冷たくなった父の手の上に
菊の花をそっとのせて
石で棺に釘を打ち付けた
冬の昼下がり。
微かに差した日差しの中で
手を振る父の姿が見えた。
それは
我が子を育む願いのように
手を合わせ
旅立つ父を見送る娘たちを
いつまでも照らしていた。
私は黙って
遺影を抱きしめる。
私は声を押し殺して
「お父さん。」と
呼んでみる。
自由詩
お見送り
Copyright
梓ゆい
2018-12-10 01:15:51