世界
由比良 倖
眼は眼の外にあり、私たちに肉眼などあり得ないのです、世界にはもとよりひとりしかいなかったのだから、神様が発明したのは、ただ孤独(iso)だけで、
「私が遠い場所に行って帰ってきたら、どうか私が私である本来を、私を(裏)返して、」
(私をきっと、私をきっと手の平の上で、夜にして
白い記憶の中へ、日の拡がりに(なみだ)が浮かび、上がり、
鳴らないラジオが、並び、続いている、どこまでも、ここま、でも、
2
止まる場所を見た、そう言えば昨日、扉が閉まっていて、心臓が止まっていて、
あなたはずっと眠っていて、人形はいつまでも笑っていて、僕は、
僕はいつまでも少しだけ、震えてて、これが終わったら、って言おうとして、
指を上げかけたんだ、とても、震えてて、何もかもが終わったあとは、
美しいと思っていたんだ、(あれもこれもどれもそれも)、流れ去ったあとは、とても、美しいと思っていたんだよ、あれら太陽は、空の全てから降ってくるもの。
3
世界は間違っている、自明なこととして、始まりは間違いだった、だから僕たちは壊すしかない、
「ねえ、ねえ、起きてよ、君、世界は間違っているんだよ、」
夜は朝には、朝は、夜には、それぞれそれぞれ、狂ったように風が吹き、
いずれにせよ、いずれにせよ、時間など無いのだし、何にせよ、私たちは死んでいるのです、
自明、自明、生きていることの憂鬱と、肉体性の論拠に、消極的に準ずることの、一瞬の出来事、
の中に、その中に消えること、
の
必然。
4
奇跡を探す必要はない、何故ならそれは永遠と併存しているものだから、分からない、分からない分からない、何故なら……、私たちは永遠と、共にあるのだろうか?
それとも……やがてもヒロイックな現実主義が私たちを押し潰すのだろうか、地球の端から灰色の、やわらかな、弾幕……何もかもを包む雨は優しいだろうか?
欲求、欲求不安、手入れの行きとどいた、さらやかな不安。
あなたに触れようとした私の腕は私の腕なのか、あなたを包むのはいつまでそんな黒い霧なのでしょうか、ここは未来なのか、涙は何故流れるのでしょうか、何故私の見る道は、こんなにも赤く赤く赤く、続いているのでしょうか?
そしていつまでも跫音のような鐘の音、
忘恩が全てを覆い尽くしてしまえばいい、と、雨音のような、ガラスの音符のような、絶滅した(セカイ)の化石のような、それを叩いたときに鳴る、死んだもののような、何かのような、呻きのような、
(生まれる!
ねえ、空、ねえ、君、そこは、(きれい)ですか、どこまで続くんですか、どこまで続くんですが、悲しみは、どこから
ねえ、
5
必然、
青-あお-blue
セカイの葬式ちゅうに鳴り響く、いちおくの携帯電話、
じゅうおくの、だんまつまの声のテープ、
地平から、天上へ、太陽をやっと反映するほどの、薄い、切ないくだが通っていて、
そのなかをとめどなくとめどなく流れる、ひゃくおくの人間の最後の(……()めいた)涙、
僕は見ていた、
とうとう海が(出来/干)上がる、
6
誰もいない場所で回転する、
(life is more than words)
7
いろどってください、ねえ、くだらない音楽!、ねえ、最後、
指先から滅びていく世界を、と、とと、とどめておくため、
黄色い風圧、身体中の関節をならして音楽をつくりたい、
(肉、肉、肉が邪魔なの、
(メモ:指輪を着けるのは、骨を剥き出しにするため、
「おはよう、起きて、」
(世界…。