世界
由比良 倖

眼は眼の外にあり、私たちに肉眼などあり得ないのです、世界にはもとよりひとりしかいなかったのだから、神様が発明したのは、ただ孤独(iso)だけで、

「私が遠い場所に行って帰ってきたら、どうか私が私である本来を、私を(裏)返して、」

(私をきっと、私をきっと手の平の上で、夜にして

白い記憶の中へ、日の拡がりに(なみだ)が浮かび、上がり、
鳴らないラジオが、並び、続いている、どこまでも、ここま、でも、



止まる場所を見た、そう言えば昨日、扉が閉まっていて、心臓が止まっていて、
あなたはずっと眠っていて、人形はいつまでも笑っていて、僕は、
僕はいつまでも少しだけ、震えてて、これが終わったら、って言おうとして、
指を上げかけたんだ、とても、震えてて、何もかもが終わったあとは、
美しいと思っていたんだ、(あれもこれもどれもそれも)、流れ去ったあとは、とても、美しいと思っていたんだよ、あれら太陽は、空の全てから降ってくるもの。



世界は間違っている、自明なこととして、始まりは間違いだった、だから僕たちは壊すしかない、
「ねえ、ねえ、起きてよ、君、世界は間違っているんだよ、」
夜は朝には、朝は、夜には、それぞれそれぞれ、狂ったように風が吹き、
いずれにせよ、いずれにせよ、時間など無いのだし、何にせよ、私たちは死んでいるのです、
自明、自明、生きていることの憂鬱と、肉体性の論拠に、消極的に準ずることの、一瞬の出来事、
の中に、その中に消えること、

必然。



奇跡を探す必要はない、何故ならそれは永遠と併存しているものだから、分からない、分からない分からない、何故なら……、私たちは永遠と、共にあるのだろうか?
それとも……やがてもヒロイックな現実主義が私たちを押し潰すのだろうか、地球の端から灰色の、やわらかな、弾幕……何もかもを包む雨は優しいだろうか?
欲求、欲求不安、手入れの行きとどいた、さらやかな不安。

あなたに触れようとした私の腕は私の腕なのか、あなたを包むのはいつまでそんな黒い霧なのでしょうか、ここは未来なのか、涙は何故流れるのでしょうか、何故私の見る道は、こんなにも赤く赤く赤く、続いているのでしょうか?

そしていつまでも跫音のような鐘の音、

忘恩が全てを覆い尽くしてしまえばいい、と、雨音のような、ガラスの音符のような、絶滅した(セカイ)の化石のような、それを叩いたときに鳴る、死んだもののような、何かのような、呻きのような、

(生まれる!

ねえ、空、ねえ、君、そこは、(きれい)ですか、どこまで続くんですか、どこまで続くんですが、悲しみは、どこから

ねえ、



必然、

青-あお-blue

セカイの葬式ちゅうに鳴り響く、いちおくの携帯電話、

じゅうおくの、だんまつまの声のテープ、

地平から、天上へ、太陽をやっと反映するほどの、薄い、切ないくだが通っていて、

そのなかをとめどなくとめどなく流れる、ひゃくおくの人間の最後の(……()めいた)涙、

僕は見ていた、

とうとう海が(出来/干)上がる、



誰もいない場所で回転する、

(life is more than words)



いろどってください、ねえ、くだらない音楽!、ねえ、最後、
指先から滅びていく世界を、と、とと、とどめておくため、

黄色い風圧、身体中の関節をならして音楽をつくりたい、
(肉、肉、肉が邪魔なの、

(メモ:指輪を着けるのは、骨を剥き出しにするため、

「おはよう、起きて、」

(世界…。


自由詩 世界 Copyright 由比良 倖 2018-12-05 19:39:18
notebook Home