部屋
ゴデル

アルツハイマーの魂が
何度も「部屋」から
抜け出してしまうので
管理者はとても困っていました

そこで
ベテランの僕に
彼女を「部屋」から出さないようにと
指示がありました

僕は今まさに「部屋」から
離れていこうとしている
彼女に向って

「ねえ、そっちは普通の人の病院だよ。」

と言いました

「そうか。」

と彼女は答えました

「僕たちはこっちこっち。」

「こっちか。」

抜けかけていた彼女は
すうっと
「部屋」に戻ってきました

「僕は色基地外だけど、君は?」

「私も色基地外よ」

彼女は言いました

「お兄さん触らせて。」

彼女は僕の体を触ってきました
僕はされるがままにしていました

彼女は笑いながら
僕を揉みしだきました
何度も何度も

僕が声を出すと
彼女は僕の声色をまねて
うれしそうにしました

そうしているうちに
夜も明けてきて
部屋それ自体が
定かではなくなっていきました

ゴミの回収車がやってくる頃には
彼女は奇声を挙げながら
消えてしまいました

以上がこの事件の顛末です
身体拘束でなければ良いのですが




自由詩 部屋 Copyright ゴデル 2018-11-30 19:01:06
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