異邦人
ミナト 螢
田舎で鳴らすパンプスの音は
アスファルトと喧嘩をしているようで
沈黙の町に突き刺す矢の道
着飾った自分を恥じた後で
鏡を見る気にはならないから
タートルネックを折り返しながら
顔を隠したい犯人みたいに
悪いことをしたわけじゃないけれど
ヒールの先で刻むリズム感が
都会の人より劣ると思った
振り返ることなく前を見つめて
しゃっくりが止まらなくなる道で
背中を叩いてくれる人がいれば
温もりに触れて優しくなれるのに
たった三センチの高さだけが
自分と他人を遠ざけてしまう
脱ぎ捨てるには早過ぎるパンプス
この町を滑るスニーカーの底が
汚れる時まで君は異邦人