虎よ、虎よ
帆場蔵人
老いた虎がいる
四肢は痩せ、臥せっている
しかし、その眼からは咆哮がのぞく
虎よ、虎よ
わたしはおまえになりたかった
虎よ、虎よ、おまえは
無駄や無理や、と吠え
わたしの頭をねじ伏せた
庇護と否定のぬるい泥沼に
溺れさせ、虎は厳かで強かに
わたしを常に砕いては
腹におさめてきたのだ
虎よ、虎よ
わたしはおまえになりたかった
虎よ、虎よ
作り上げたわたしの虎は張り子
老いた虎がいる
おまえには無理や、と吠えたなら
わたしは虎になれるのか、なれるはずもない
張り子の虎は張り子でしかない
虎に憧れ続けるひとでしかない
虎よ、虎よ、もう一度、吠えてくれ