だまされたくない
秋葉竹


もしも、
ああ、もしも、ね
もしも願いが叶うなら
もしも、
ああ、
もしも許されるのなら、
今年のうちに

すべてを忘れてしまいたい

古い記憶から
あの日の寝室の記憶まで
すべての忘れられない
風景を。

あの、
幸せな温もりにくるまれていた
春の夜の寝室も、

言葉でお互い古傷を抉りあった
あの、
憎しみさえすり減らした
いちねんの最後の夜を終えて
リビングのソファーで寝た
心が凍った明け方も

なにが、
あけまして、なのか、
なにが、
おめでとう、なのか、

ふざけてんじゃねぇよ

頭の中まで
チクチクして痛んだ
新しいあしたを迎えたテレビのまえ
あの、
明け方も。

ああ、
もしも許されるのなら、
今すぐにでも、

すべてを忘れてしまいたい


ああ、
いちねんは、また、
もうすぐ、終わるだろう

けれど
もうすぐ、
すべてを隠す
すべてを、真白に、埋め尽くす、

もうすぐ雪が降ってくる

そして雪は降り積もる


そして、それに、だまされる

その、
哀しく、美しい、偽りに。






自由詩 だまされたくない Copyright 秋葉竹 2018-11-11 21:19:58
notebook Home 戻る