楽園
竜門勇気
陸上生物の楽園が地上
始めるのをやめるのが
僕の特権
冷たい蹄をぬかるみのなかで
歌わせていようよ
跳ね回るノミが煙みたいに見えた
死の間際の君は赤い炭みたいに見えた
近い場所から
遠い場所へ
角があったからまっすぐ来たんだ
そう、眉間に一つ
僕よりも真っ直ぐな角が
誰かより苦労したとは思ってないけど
誰よりも賢く振る舞ったとも思えない
双子の星が空にいくつある?
一人ぼっちの星と同じ数だけ
海棲種の祈りは誰に届くんだろう
だって祈りなんてありふれたもんだろ
僕が祈った願いの残滓が
君の窓辺で見つかって
宛先を書かずに送り出す
砕けるような想像の暴露
そんなことにはなんねーさ
どこに届く
何をノックする
どんなスタンプを探してる?
なんにでも使えて確かなもの
ブラウン管ってな昔の技術があってな
今も実はこの部屋にあるんだ
そいつにつなぐコードがこれ
アンテナ線に介入させるんだ
そこでぐるぐる回ってるの?
ビニールだよ ただの
溝が掘ってある
誰にも使えない世界の方法が
ありえない充足をもたらすんだって?
マジかお前よ
壊れたラジオが救世のメロディのTAB譜を吐くとでも?
消えかけたお前なんていない
忘れられるまでの少しの猶予に酔ってるだけさ
君の何かが腐ったなら
何がそれを分解したかまで考えるべきだ
代謝がそいつに負けたのさ
手を離した自転車が世界の終わりに落ちていく
どうして手を離した?
ごめんだと思ったんだろ
心中なんて
僕や君の大事な何かは淘汰の波をかぶる
嫌なヤツが一人出来上がる
心臓の中の一つの部品が
いつまでだって
夢物語を語るだろう
聞こえる時もあれば
そうじゃないときもある
精神を得た僕らの特権
精神について考える時間
葉と枝は何を感じる
ただの拷問が学問にだってなる
心臓の中の一つの仕事が
いつも邪魔をする
生きていたいんじゃない
やりてーようにずっと
ずっとずっと
続けていきたい
精神生物の楽園こそ
物質のインフラ大国ここ現実
愉快なつながりに笑って
切断を不愉快と思うんだ
精神を得た僕らの結論は
精神について考えるのが精神の本質
葉と枝と根を燃やす火
あそこにあったものが
ここに来て変わってしまう
ポケットの中で世界が終わる
手を入れて取り出すたびにまた始まって
精神世界は観測の外で
クオリアとシニフィエ
どっか繋がってんのはわかっても
誰にも想像できない
このネジとネジが噛み合う部品は
ただ気づくんだ
これとこれは一つになってる
でもどうしてそんな事が起きるんだ?って
シニフィアンが量産される
何もかも間違っていて
一番えらいやつが
間違ってても良いって言ってるのかもな
誤解は世界に空いた窓と同じだけあって
それが全て正しいんだ
楽園は楽園の中にあって
カナリヤが無数にいて
岩間に極上のアイラウィスキーが
湧き続ける
僕の楽園の話をしよう
僕に楽園の話をしてくれ