郵便脚夫
ひだかたけし
谷底から
這い上がって来る強風は
この山の頂きで
ぽそぽそと降る雪となる
郵便脚夫のこの俺は
向こうの国に郵便を
届けにこの山を
越えねばならない
いかにも陰気な顔をして
日に日に何度も山路を辿り
降りしきる雪にびしょびしょと
果てない労役をこなしていく
こんな日々はいつか終わり
新たに耀く毎日が
必ずやって来るさと狂おしく
憧れ待っていたのは何時か
今ではすっかり擦り切れて
疲弊し切ったじぶんがいる
毎日毎日郵便を運ぶ
こちらの国から向こうの国へと
雪に塗れて往き来して
そうしてそれなのにこの俺は
向こうの国の人々と
一度として会ったことがない
そんなことを今更ながら
不思議に思って気付くのだ