肉じゃが
ミナト 螢
煮込んでいるジャガイモを
箸で仕留めて目玉を二つ
描いただけの顔
人参に寄り添い聞く耳と
しゃべる口を与えてあげようか
玉ねぎと仲良しだから
いつも涙を流して空を見上げるよ
肉が汚したアクの浮いた雲を
透き通るまで誰かが捨てるんだ
肉じゃがを吹きこぼすような強火で
怒ったことは一度もなくても
鍋の中で転がりながら叫ぶ
家族がバラバラになってゆくのを
すくってくれるのは丸いお玉だ
皿に盛られる時には目が潰れ
世界が真っ暗にしか感じないけど
大切なものをしまったままの
輪切りにされたデンプンの栄養
命の源を作る仕事が
僕の内側でグラグラと燃える