白い粉雪
梓ゆい
何処までも続く無色透明の青
ぽつぽつと現れた雲の鱗片が
家族の元へと帰る父の骨の様だ。
炎の熱を帯びた銀の台を眺めたら
思わず声をかけていた。
「お父ちゃんお帰り。熱かったねぇ。」
大きく膨れ上がる感情は
ぴぃーんと張り詰めた涙腺を刺激して
鋭い針の先を突き立てるかの如く
腹の奥底に突き刺さる。
それでも
泣けずにいる私を置き去りに
箸を渡る父の骨は
からん・・・・。からん・・・・。と
一つ一つ丁寧に
壺の中へ入ってゆく。
母が震える手で箸を握り
父の喉仏を摘まんだ瞬間
はらり。と舞う白い粉は
少し皺が増えた手を包む様に舞い上がり
そっと落ちてゆく。
ぎゅーっと目を閉じて
唇を噛み締めたまま
目の端で
母の手を
殺風景な部屋で咲く百合の花を眺めていた。
これからも生きてゆくのだ。
父のいない日常の中
慎ましく
時には孤独と戦って。