シャーベット
ミナト 螢
厚く張った氷を砕くために
ブーツの踵が地上へ届く
心臓が埋められた場所で
掘り起こしてる足跡の形が
誰にも踏まれず残っているのは
きっと一人で歩いたせいだね
氷と永の文字が出会う冬は
時間を止めることができるから
互いに知らん顔をしたとしても
思いがクリアになって重なる
透明な世界で呼吸をする
10秒という短い間にも
人は誰かに傘を差し出したり
ドーナツの浮き輪を投げたりして
心臓を落とさないように近付いた
みんな守り合って生きてゆけるね
私は多分ずっと落とし続ける
心臓に蓋をした氷の棺を
毎年ひとつずつ壊していく