シリウス
ミナト 螢
ウールのマフラーを強く巻いても
誰かの腕を離れたこの首は
隙間だらけの星空みたいな
編み目のひとつにほどける思いを
両手で救って届けたかった
チクチクと痛むウールの感触
太陽の熱と光も凶器だ
心が怯えて戻れない日々を
ドミノ倒しで追いかけるように
思い出の始点で輝く星は
だいたい喉につっかえて吐くよ
屋上で食べたみかんの皮を
頭上に乗せたらハロウィンのかぼちゃ
それが王冠の印だよって
教えてくれた人はどこにいるの
魔法を掛けて解くのを忘れた
消えない王冠の転がる先で
眩しい色を放つ命の夜
一等星の瞬きが聞こえる