落丁
ミナト 螢
紙の質感やインクの匂いが
伝わる指先を誰かに向けて
1ページの物語も読まずに
主役を生きてる人が妬ましい
自分らしい振る舞いやセリフを
学んできたのは同じはずなのに
シャボン玉の大きさが違うように
膨らませるコツを知らないから
割れる前に飲み込まれてゆくよ
吸収されてばかりの人生は
仕事が減って自由が増えていく
忙しさの中で割いた時間を
自由と呼んだあの頃みたいに
汗と涙が流れなくなって
与えられたストーリーに潜ると
最後のページが見当たらなかった
ここから生き直すプロローグが
存在の理由を確かめるため
自分の言葉で描いてく未来
欠けていたページを埋めていこう