偶然
ミナト 螢
線路の隣で揺れるコスモスが
うなだれた首を守りきれずに
飛ばされていく自分のように
シャツのアイロンを忘れたくらいで
家に戻るのが面倒になって
朝は行列に並ぶことなく
好きな映画を観て時を許した
都会で踏み外す一歩は多分
蟻みたいに群がる巣の組織が
穴を埋めながら明日を創る
僕が迎えている朝はきっと
昨日の続きにポイントを付けても
明日に変わることなどないのだ
花に重ねた自分の運命を
マフラーで結び抱きしめてやる
苦しいほど強く妬んだ世界に
どんな言葉なら届くだろうか
枕のカバーに撒いた香水で
僕の夢を混ぜて揮発する夜の
神秘を探しに瞳を閉じた