空蒼く
こたきひろし
女の人の産道を通り抜けて
その人の股間からこぼれて落ちた
日の記憶は何もない
それ以前の自分が宇宙の何処かで
何をどうしていたかなんて
解る筈がない
産声をあげたとき
自分を取り上げて臍の緒を切り身に付いた羊水を
湯水で洗ってくれた人の生存を確かめた事もなかった
ヒトの生殖も命から命へと繋がれていく事に何ら変わらない
と言う事実
女が産む為には男の種子が必要不可欠
だか
その廻り合いが如何にして選ばれるかを
何者も知らない
その不可思議
男女の間に沸き上がるエネルギー
愛情
逆さにすれば情愛
激しく絡み合う体
摩擦
オーガズム
空蒼くすみきった朝に
炊きたてのご飯に卵を落とす様を連想する
私は
いったい何者か