或る秋・連絡船
石村



  或る秋


切り取られた空が

造り酒屋の軒先にひつかかつて

はたはた ゆれてゐる

おかつぱの姉さんと

坊主頭の弟が

口をまんまるにして

それを見つめてゐる

ふたりの足元で

子猫がまるまつてゐる

或る秋の

朝がおはるまで


(二〇一八年九月二〇日)





  連絡船


なくなつた人たちをのせて

連絡船が行く 温かい海の上を

台風が来るといふのに

風はなく 波もない

おだやかな海の底から

やさしい歌声がわきあがつてくる

ああ よかつた

いいところへ行くのですね

ほんたうに よかつた

わたしも 行くのでせうか

ほんたうに 行くのでせうか


(二〇一八年十月六日)



自由詩 或る秋・連絡船 Copyright 石村 2018-10-06 17:22:03
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