good!
竜門勇気
何かどうでもいいことを
左の手のひらに一つ
何かどうでもいいものを
右手の人差指の上に少し
噛みすぎたガムを耳の中に一つ
冷たすぎる水をまぶたの中に少し
はみ出した友達の
後ろ姿を一つ
見えない恋人の
優しい言葉を少し
遊びすぎた子供の足音を一つ
電池のなくなったカセットプレイヤーを少し
何かどうなってもいいものを
青いガラスのコップに一つ
何かどうなってもいいものを
剥がれかけた壁紙の裏に少し
静かで暖かい憂鬱な時間を一つ
破裂しそうで緩やかなカセットプレイヤーを少し
雨のあと消えなかった
鼻歌を一つ
電波の届かなかった
FMラジオについていたイヤホンを少し
丸いプラスティックのソーターが一つ
蹄鉄付きのロバのつま先を少し
あの物語の最後の行を
破り取ったときの気持ちを一つ
狂った時計を直したあと
何度合わせても合わなかった時間を少し
二人で食べた一つのケーキの残りを一つ
沈黙の中で切り替わったテープの音を少し
good.
近づいては消えてく理解を一つ
僕がゾンビだって気づいた君が叫び声を少し
ひまわりの種が散らばった
ウォークインを歩く痛みを一つ
何かどうでもいいものが
こびりついた指先を少し
壁紙に残ったバニラの残り香を一つ
コンセントの抜けたラジオ・カセットプレイヤーを少し
最後の欠けた物語の背表紙に
冷たく降りかかるすぐに狂っているとわかるほど遅れた秒針の音を少し
何かを探してそうなっただろう散らかった物入れを一つ
砕けたガラスのくだらない置物が少し
降り続く小さな雨に歌う少しだけ思い入れのあるあの歌を一つ
流れる血に汚れた右耳にぶら下がったイヤホンを一つ
静かで暖かい憂鬱な時間を一つ
破裂しそうで緩やかなカセットプレイヤーを少し
何かどうなってもいいものを
青いガラスのコップに一つ
何かどうなってもいいものを
剥がれかけた壁紙の裏に少し
遊びすぎた子供の足音を一つ
電池のなくなったカセットプレイヤーを少し
はみ出した友達の
後ろ姿を一つ
見えない恋人の
優しい言葉を少し
噛みすぎたガムを耳の中に一つ
冷たすぎる水をまぶたの中に少し
何かどうでもいいことを
左の手のひらに一つ
何かどうでもいいものを
右手の人差指の上に少し